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公開シンポジウム「接骨院治療の医療保険(療養費)の運用を考える

テーマ:接骨院(柔道整復師治療院)の医療保険(療養費)の運用について

最近、柔道整復師(接骨院)の増加に伴い、慰安行為(非治療行為)、濃厚治療、多部位治療など不正(濫用)な療養費請求が目立つようになってきています。 私たちは、国民のための制度である医療保険(療養費)の健全なる運用を行なうため、どのような運用システムを構築したらよいか検討してまいりました。この検討した結果をシンポジウムの場で討議・検討してよりよいものを作り出そうと考えています。このシンポジウムの内容に関連した事項を説明しますのでご覧下さい。

1. Q: 接骨院の治療と医師の治療の違いは何ですか?

  • A: 接骨院が行なっている治療・施術は専ら外科的観血手術をせず、いわゆる徒手整復(保存療法)を行なうものであります。徒手整復とは、主に手技を用いて人の生命力・回復力を増進させ、これをもって治癒を求めるものです。

2. Q: 保険医療とは誰の為のものですか?

  • A: 保険医療とは、国民の健康の維持・増進をはかる制度,システムです。日本では全ての国民が公的保険医療制度に加入することになっています。これを”国民皆保険制度”といい、諸外国と比較して我国の大きな特徴になっています。

3. 医療保険の仕組み

  • 医療保険では、医療サービス(診断,治療,検査など)そのものが保険者より患者様(被保険者)に給付されます。(療養の給付,現物給付)

4. ”療養の給付”と”療養費の給付”の違い

  • “療養の給付”とは、医療サービス(診断,治療,検査など)そのものが保険者より患者様(被保険者)に給付されることをいいます。すなわち、医療保険と同義です。 “療養費の給付”とは医療サービス(診断,治療,検査など)そのものではなく、療養に要した費用の一部を保険者が患者様(被保険者)に現金支給することです。(現金給付)すなわち、”療養の給付”では医療サービスというサービスが直接提供されるのに対して、”療養費の給付”では現金が保険者より被保険者に提供されることになります。したがって、療養費は療養の給付(医療保険)の例外と位置づけられています。

5. 接骨院治療における療養費の特徴

  • Q: 何故、接骨院における療養費の取扱いは他の療養費(按摩,鍼灸,マッサージ等)と異なるシステムが採用されているのですか?
  • A: 昭和の初期においては、整形外科が十分に発達しておらず、かつ外科医が少なかったという事情もあり、骨折,脱臼,打撲,捻挫 等の治療は、柔道整復師が担当するケースが多くありました。そこで、柔道整復師の場合は、昭和11年に社会保険部長の通達により各都道府県知事と柔道整復師が協定を結び、料金表を定めて療養費が支給されることになりました。この時に療養費委任払制度(受領委任制度)が採用されました。これが、接骨院における療養費の取扱いが、他のそれと異なる理由です。
  • Q: 療養費委任払制度の特徴とはどんなことですか?
  • A: 療養費は原則的には償還払い制度となっています。(償還払い制度とは、患者様(被保険者)が治療費を柔道整復師に全額支払い、その領収書を持って保険者に請求します。保険者は、その費用の全部もしくは一部を患者様(被保険者)に支払うシステムのことを言います)しかし、柔道整復師の場合は例外的に療養費委任払が認められています。療養費委任払制度とは、患者様(被保険者)は、治療費の一部負担金のみを柔道整復師に支払います。治療費の残り分は、柔道整復師により直接保険者に請求(申請)します。この請求する行為を患者様(被保険者)が柔道整復師に委任すること、これを療養費委任払制度といいます。患者様(被保険者)は治療院の窓口で少ない金額(一部負担金)で柔道整復師の治療を受けることができます。

6. 濫用,不正請求が生まれる原因

大きく3つの原因があると考えています。
  1. 療養費対象の治療内容と程度についての定めが欠けていること。 保険治療の場合、腰痛,肩コリは保険治療の対象とならないと言われておりますが、腰痛ひとつとってもその原因は様々で、最近ではストレスが腰痛の原因として 1割程度を占めるなどの研究発表もされています。腰痛・肩こり現象は何らかの原因があるはずです。その原因を追求することが重要であり、原因によっては保険取扱いの対象外になる場合もあります。保険治療の取扱い範囲と程度を詳細に決め、基準を作るべきだと思います。慢性,亜急性などの統一的な定義の設定も必要です。
  2. 料金が低額であること。 厚労省の定めた料金体系による施術料金は、人件費その他諸経費の高騰と比較して著しく低額である為、慰安的行為まで医療保険を流用する誘引になっているように思われます。
  3. 審査システム基準の不明確化 審査パワー不足 審査システム基準が不明確のみならず、療養費支給申請書(レセプト)の審査の人的パワーが不足しています。

7. どうしたら濫用を防止することができるか?

  1. 事前対策
    1. 療養費委任払制度の利用資格の認定 現在の制度では、柔道整復師の資格をとり、社団法人に加入し協定を結ぶか、社団法人以外の会に加入し個人契約を各都道府県知事と結ぶかすれば療養費委任払制度の取扱いは可能となっています。極言すれば、資格を取れれば保険が扱えるということです。保険を取扱う前に、十分な臨床研修を行ない、研修後認定試験を行ない、それに合格した者が保険を取扱うことができるような認定制度の設置が必要であると考えます。
    2. 療養治療の内容と制度を明確化する 何が扱えて、何が扱えないのか明快に規定すべきです。
    3. 審査システムの構築化 どこの団体にも加入していない個人契約者が増加しています。レセプトの審査は、各団体が資金を拠出し民間の審査システムを構築するのがよいと思います。現在のように、社団法人日本柔道整復師会中心の審査会では公平性が保たれません。
  2. 事後対策
    1. 療養費委任払の取扱中止・取消 各団体より資金を拠出し構築された審査会により不正請求の発覚した者に対しては、療養費委任払制度の取扱を中止・取消できる権限を持たせるようにします。
以上